弁護士コラム

離婚問題 – 3つの視点から見る8つのポイント「お子様についての問題」

2017.06.22 / 弁護士コラム・「男女問題」

2つ目の視点「お子様について」の3つのポイントをご紹介します。

② 親権者の指定

親権は、大まかに子の財産の管理権と身上監護権に分かれます。

前者は、子どもの財産を管理し、子どもの法律行為に対して同意を与える権利で、後者は、子の居所を指定したり(民法第821条)、しつけをする権利(同法第822条)等のことです。

このように親権は、複数の権利の集合体であることから、個別の権利を分離して、監護しない親(身上監護権を持たない親)が親権を取得するなどということも不可能ではありません。しかし、これはあくまでも例外的な事態であり、お子様の学校の手続き等を考えれば、親権を分離してしまうというのは不便ですので、あまり望ましい選択とは言えないと思います。

他方、親権の問題というのは、金銭的な問題よりも遥かに双方にとって譲歩しがたい問題であり、離婚事件の中では最も大きな争点となることが多いという印象です。逆に、離婚を考えた際に、皆さまが一番不安に思う点でもあるのではないでしょうか。

そこで、簡単にではありますが、裁判所がどのように親権者を指定するのかについてご説明したいと思います。まず、民法は、親権者変更の規定(同法第819条6項)において、「子の利益のために必要があると認めるときは、家庭裁判所は、…親権者を他の一方に変更することができる。」としており、親権者の決定においては子の利益及び福祉を基準とすべきことを明らかにしています。

すなわち、裁判所は、個別の事案に応じて、子の利益となるように親権者を指定するということです。
しかし、これでは、抽象的すぎて、何を基準に裁判所が親権者を指定するのかよく分かりません。

もちろん、親権者の指定においては、個別の事案において慎重な判断が求められるため、一概に基準を示すことは出来ません。
しかし、一般的には、母性優先の基準・継続性の基準・子の意思尊重の基準・きょうだい不分離の基準・面会交流の許容・奪取の違法性等が重視されます。

母性優先の基準…乳幼児については、母親の監護養育に委ねることが子の福祉に資するとの考え方に基づくものです。
継続性の基準…子の精神的安定のためには、監護養育者を変更することは望ましくないため、実際に監護養育してきた者を優先するというものです。
子の意思尊重の基準…10歳前後の子どもであれば、自らの意思を表明する能力があるとされており、子に希望があるのであれば、かかる意思を尊重するとのものである。なお、子どもが15歳以上である場合には、裁判所は、子の監護に関する処分についての裁判又は親権者の指定についての裁判をするにあたり、子の陳述を聴取しなければならないとされています。
きょうだい不分離の基準…幼児期にきょうだいが共に生活をすることにより得る経験は貴重なものであるとの考え方に基づくものです。
面会交流の許容…非監護親とも良好な関係を築くことが子の成長にとっても重要であるとの考え方に基づくものです。
奪取の違法性…子を奪取した場合には、仮にその後に安定した生活をしていたとしても、親権者としての適格に問題があるとの考えに基づくものです。

③ 面会交流の方法

面会交流とは、非監護親(子どもらと別居している親)が、子どもらと面会及びその他の交流(手紙や写真のやり取り等)を行うことです(民法766条1項参照)。

別居や離婚をする場合には、子どもの健やかな成長のために、非監護親との面会交流の方法について定めることが一般的です。

もっとも、別居や離婚の場合には、監護親と非監護親との間で感情的な対立が存在することが多く、面会交流の方法について協議をすることも難しい場合が多いです。

しかし、子どもらが、両方の親から愛されていると感じたり、多様な考え方に触れたりすることが出来る機会となるという意味で、面会交流には意義があると思います。双方の親が面会交流の意義を正しく理解し、建設的な協議がなされることが望まれます。

④ 養育費

別居している場合はもちろん、離婚した場合にも非監護親が子どもらの親であることに変わりはありません。そのため、非監護親にも、仮に生活に余力がなかったとしても、子どもに自分と同程度の水準の生活を保障する義務(生活保持義務と言います。)があります。

したがって、非監護親は、自立していない子ども(通常は、20歳未満)の衣食住に必要な経費・教育費・医療費等のために、養育費を支払う必要があるのです。

養育費の金額は、原則として夫婦双方の収入を基準にし、その上で、個別の事情を考慮して若干の調整を加え、決定されます。もちろん、当事者双方が納得している場合には、このような決定方法による必要はありません。

 

次回は3つ目の視点「お金の問題」です。

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